BtoBのペルソナは合理的には動かない。不の感情が顧客の意思決定を止める。
BtoBのペルソナ設計は、顧客は課題解決のために動く。意思決定は合理的に行われる。そこにはBtoCのように感情や気分、ノリなんてものは一切関与しない。このような前提のもとに作られることがほとんどだ。
これらは考え方の大枠としては間違っていない。
しかし、僕は明確に違和感を覚えるところがある。
それは「BtoBだから」という理由で、意思決定やそのプロセスに、人間の感情が本当に関与しないのか?ということだ。
目次
BtoBのペルソナから「感情」を排除してよいのだろうか?
あなたにこういう経験はないだろうか?
- 新人の頃、仕事のミスを攻められて上司が怖くなった(失敗を引きずり、気分は落ち込む)
- 上司から任された仕事の進め方が分からない、でも上司に質問しづらい(自分で考えてよ、と言われるのが怖い)
- 社長や上司は、新しいことにチャレンジしよう!と言ってくるが手を挙げたくない(手を挙げたら全部引き受けなければならなくなる気がする)
あなたは企業で働く一人の人間だが、上記に挙げた話にはすべて「感情」が含まれている。
もっと身近な例を言えば、金曜日の17時に、仕事で緊急事態が発生したら、あなたは、こう思うのではないだろうか?
- おいおい、今日は華金だってのによ
- なんで、仕事しないといけねーんだ
つまり、感情があるってことだ。
BtoBのペルソナ設計の違和感の正体
これが、何を意味するのか?
BtoBのペルソナは必ずしも合理的に動くとは限らない、ということだ。
そしてそれは人間の仕様である。
しかし、世の中の「ペルソナ設計理論」は実に不思議だ。
意思決定に関わるすべての登場人物が感情を排し、合理的に動く前提で描かれる。
例えるなら「優等生過ぎる顧客像」とでも言うべきだろうか。
これが「ペルソナ設計」の違和感の正体だ。
優等生なんてどこにもいない。
ペルソナを優等生にすると現実と乖離する。
前述の通り、企業で働く人の中には明確に感情が存在する。
しかもその感情は楽しいや気持ちいいというプラスの感情よりも、怖い、不安、責任を追いたくないといったマイナスな感情の方が多い。(私は「顧客の不」と呼んでいる)
そして、そのマイナスな感情が企業の意思決定に大きな影響を与える。
この前提を置いたとき「課題解決のために合理的に動く人間」をペルソナとして定義してしまうと、現実離れした理想論になってしまう。
つまり、実務で全く機能しない、役に立たないペルソナになる。
BtoBのペルソナを現実的なものにするには?
説明のために1つシナリオを用意しよう。
例えば、私の会社がとあるツールを販売しているBtoB企業だったとする。
このとき、過去に集めたリード情報の役職を調べていった結果、「役職なし」「入社1~2年目」の担当者が多かったとしよう。
私はこんな仮説を立てる。
その企業担当者(「新人担当者の彼」ということにしよう)は、自ら率先してツール探しをしているのではなく、上司から「こういうツールを探してきて」と無茶ぶりされたんだろな、と。
BtoBのペルソナは二重人格だ。(本音と建前の存在)
この「新人担当者の彼」についてもう少し、想像を膨らませてみたい。
彼はどんな気持ちでツール探し・情報収集をするのだろうか?
私は、彼には「本音」と「建前」が存在しているのだと考える。
彼の本音:
- 何か良く分からないけどめんどくさいこと頼まれたわー
- ちゃんとやらないとあの人(上司)怒るんだよなー
- ただでさえ忙しいのに、なぜ俺がこれをやらないといけないんだ
- 早く仕事を終えて、遊びに行きてー
彼の建前:
- 上司の要望に沿ったツールを探さなきゃいけない
- ツールの選択肢や選定基準を客観的にまとめなきゃいけない
- それらに自身の見解をつけて論理的に社内報告しなきゃいけない
彼の中には嫌だなという本音があるが、口が裂けてもそんな「ぶっちゃけ」を上司に言うことはできないだろう。(彼が上司に言うのは「はい、承知しました」)
もはや二重人格とも言うべき現象だ。
彼は本音を押し殺してツールを探すのだ。
BtoBのペルソナの特徴(本音より建前を優先する)
前述の話から言えること。
BtoBのペルソナには、以下の特徴がある、ということだ。
- 本音より建前が優先する
- 本音と建前は役職(立場)によって変わる
では、なぜ、彼は、本音(めんどくさい)を隠して、建前(しっかり探さなきゃ)を優先して動くのだろうか?
社会人はみんな「社会人仮面」をつけている。
それは彼が、会社という組織の中で「社会人仮面」をつけているからだ。
社会人なら、痛いほど分かるはず。
- 会社で自分の素(本音)を100%出している人なんていない
- 誰もが社会人としての仮面をつけ、建前で動いている
- でも心の奥底では、助けてほしいと思っている(「上司に質問しにくい」は良い例)
つまり、社会人はみんな「組織の力学(重力)」の影響を受ける。
だから、仮面をつける。
新人担当者の彼は「ツールを探してくる担当者」という役割(仮面)を与えられたからこそ、本音を押し殺して必死に情報を探すのだ。
企業は合理の塊。個人は非合理の塊。
会社という組織は、合理の塊だ。
経営判断、社内共有、報告、そのすべてに合理的であることが求められる。
会社で働く人は、非合理の塊だ。
一見、合理的に動いているようで、本音では不を抱えている。
合理を求める組織で、非合理な人間が働くのだから、優等生のペルソナは現実に機能しなくなる。
BtoBの意思決定は「バトンリレー」だ。
新人担当者の彼が「探すのめんどくさいんで、このツールでよくないっすか?」と、非合理な理由で購入を決めることはできない。
組織は「会社のお金を使う」合理性を求めるからだ。
だから必ず上司のチェックが入り、最終的には社長が費用対効果を判断して、ようやくハンコが押される。
つまり、「担当者→上司→社長」という意思決定のリレーが起こる。
そして、このリレーでは、走る人(役職)によって、欲しいバトン(情報)が全く異なる。
- 担当者:上司に怒られずに報告できる「ツールの比較表と見解」が欲しい
- 管理職:社長の指摘なしに突破できる「費用対効果と運用フローのまとめ」が欲しい
- 社長:超重圧の孤独の中で、経営判断を下すための「売上向上・コスト削減の明確な根拠」が欲しい
立場が変われば、欲しい情報も変わる。その裏には必ず「個人の感情」がある。
そして、働く個人の感情は、会社の意思決定に影響を与える。
- 失敗を恐れると、決断が遅くなる
- 質問できないを放置すると、上司の判断が遅れる
- 率先して動く人が出てこないと、話が始まらない
ペルソナは目の前の仕事が早く終わって欲しいと願っている。(新人担当者は上司に怒られずに仕事を終えたい)
ペルソナの不の感情は組織の意思決定を止める。(新人担当者の仕事が終わらないと上司の仕事は進まない)
つまり、BtoBのマーケターと営業がやるべきことは1つだ。
目の前のお客さん全員の仕事を無くしてやれ。
このバトンリレーを、マーケ界隈では「カスタマージャーニー」と呼んでいるのだろう。
BtoBマーケの本質は「顧客の不」の解消。
お客さんは困っている。お客さんは不安でいっぱいだ。
課題解決は正しい。が、きれいごとだ。
社会は厳しいし、仕事では辛いこともたくさんある。
ただでさえ普段の業務で忙しいのに商材の導入なんてやらされたら…
私は、BtoBマーケ・営業の本質は、お客さんの「仕事を手伝って早く終わらせてあげる」だと思っている。
お客さんは商材のことを知らない。
だから商材の導入は、手間を増やす元凶だし、正解のない仕事は不安だらけになる。
逆に、マーケも営業も、お客さんより絶対に自社の商材、業界、競合に詳しい。
それであれば、それをお客さんに教えてやればいい。それこそが「価値」だ。
こんなスタンスで研修講師をやっている。
良かったら、研修のページや無料受講を見てみてください。
「営業ロジックで構築する」BtoBのWebマーケティング実践研修
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